Auto Reverse Contoroller (ARC)について
「Auto Reverse Contoroller(ARC)」は、リバース線の線路電源の極性変換を自動で行う装置です。
鉄道模型のリバース線は、走行したまま車両の進行方向を変えられるので、運転上の面白さがあります。
しかしリバース線は「レールの極性が反対」になる箇所があるので、そのままレールを繋ぐと「ショート」してしまいます。
このため絶縁ジョイナーを設け、手動スイッチを運転しながら操作させて通過させる方法が一般的ですが、できれば手放しで運転を眺めていたいものです。
それを実現するのが、「Auto Reverse Controller(ARC)」です。
面実装部品を使用せず、簡単に製作できるようにリード部品で構成されているので、DCC自作入門にもおすすめです。
皆さんの自作を助けるための部品やプリント基板の頒布も行っています。
楽しみながら自作し、欧州での市販品に比較し安価製作できることも目指しました。
注意)仕組み上ショート電流を検知するため、少なからず、機器、線路、車両に影響を及ぼす可能性があることを理解ください。
(表面 表示LED、操作用ボタン) | (背面 コマンドステーション接続端子、フィダー接続端子) |
(内部基板) | |
トピックス
2020.05.17 頒布サイトでの頒布を開始しました。(正式公開)
特徴
- DCC専用です。線路電源が交流であることを利用し倍電圧整流回路を用い外部電源を不要としています。
- リバース区間への進入、進出の際、ショート電流を検知し、すばやく極性転極を行います。(約10ms)
- ショート検知電流は1.5A/3Aの切替式。(ジャンパピン設定)
- 電子ブレーカー(FET式)を搭載し、ショート検知時すばやく電流を遮断し、転極動作(リレー式)を行い、その後、電流を復帰制御します。
- 転極動作時はショート回復まで転極動作は行わないように制御します。
- ショート検知時は0.5秒おきに自動復帰を試みます。
- コマンドステーションからの入力1系統。出力は転極動作付き出力と、電子ブレーカー機能のみ出力(転極なし)の2系統。
- 面実装部品を使用せず、すべてリード部品としているので、はんだ付けが容易です。
- 秋月電子で入手できる部品を中心に回路設計しました。 (プリント基板等は頒布を活用ください。)
使用方法
接続方法
リバース区間の線路電源極性を転極させるために、通常部分とリバース線は絶縁ジョイナー等で「両ギャップ」を設け電気的に区切ります。コマンドステーションから通常部分は直接、リバース線区間は「Auto Reverse Contoroller」を経由して接続します。
この時、出力端子は転極動作付きの「NOR-REV OUT」に接続します。
「NOR-OUT」は過電流保護機能のみで転極機能なしのため、接続しないでください。
コマンドステーションやACアダプタの過電流防護が先に動作すると正常に動作できません。
特に容量の小さい(1A以下など)ACアダプタの場合、正常動作しない報告がありますので、注意してください。
ショート検知電流設定
ショート電流検知設定は ジャンパーピン無しの1.5A(デフォルト)状態から動作させてください。HOゲージやループ線内に多数の車両がある場合など必要に応じて3A設定(ジャンパピン挿入)に切り替えてください。
ショート検知電流設定 | JP1とJP2 | 備考 |
1.5A(デフォルト) | ピン非挿入 | 2つとも抜いてください。 |
3.0A | ピン挿入 | 2つとも挿入してください。 |
動作確認環境
・ Desktop Station DSmain r5 + 15V 4A ACアダプタ
・ Digitrax DCS50K + 12V 1.2A ACアダプタ
注意事項
- リバース区間よりも長い車両を走行させないでください。
両ギャップの入口と出口の双方でショートするため転極してもショートが改善できないためです。
デコーダ類はコマンドステーションに直接接続します。通常のDCCと同様にデコーダ類をレールに接続すると、その区間を列車ありと誤検出します。
- 消費電流の大きい車両を走行させないでください。
ショート電流と検知して正常に動作できません。
(ショート電流検知値設定用ジャンパピン 非挿入1.5A/挿入3A設定)
- ポイントデコーダ等の電流を消費する機器をリバース区間には設置しない。
(ポイントデコーダは線路経由ではなく、電線などでコマンドステーションに直接繋ぐ等の工夫を行ってください。)
Auto Reverse Controller (ARC)の製作方法
Auto Reverse Controller の製作方法について説明します。回路図
回路図(pdf)はこちら (2020.5.17更新)回路図です。EAGLEで作成しました。
部品リスト
秋月電子で入手可能なパーツだけで製作できるようにしました。部品や専用プリント基板は、当サイトの頒布のページでも入手可能です。また、リスト以外に「ハンダこて等の工具」等の用意が必要です。
Auto Reverse Controller 部品表 (2020.5.17更新)
部品番号 | 部品・規格 | 仕様 | 個数 | 備考 | 主な入手先 |
R1,2,9,10,12,13,18,19,20 | 炭素被膜抵抗(1/4W) | 10kΩ | 9 | 茶黒橙金 | 秋月 |
R3,4,5,6 | 4.7kΩ | 4 | 黄紫赤金 | 秋月 | |
R11,14 | 100kΩ | 2 | 茶黒黄金 | 秋月 | |
R15,16,17,21 | 1.2kΩ | 4 | 茶赤赤金 | 秋月 | |
R7,8,24,25 | 炭素被膜抵抗(1W) | 0.2Ω | 4 | 赤黒銀金 | 秋月 |
R22,23 | 10Ω | 2 | 茶黒黒金 | 秋月 | |
C1,3 | 電解コンデンサ | 100uF/25V | 2 | 秋月 | |
C2 | 1000uF/25V | 1 | 秋月 | ||
C4 | 積層セラミックコンデンサ | 0.1uF/25V | 1 | 秋月 | |
IC1 | 3端子レギュレータ | 78L05 | 1 | 秋月 | |
IC2 | PICマイコン | PIC16F1823 | 1 | 秋月 | |
ICソケット | 14ピン | 1 | 秋月 | ||
D1,D2 | ダイオード | 1N4007 | 2 | 相当品可 | 秋月 |
D3,4,5,6,7 | 1N4148 | 5 | 相当品可 | 秋月 | |
Q1,2,3,4 | トランジスタ | 2SC1815 | 4 | 相当品可 | 秋月 |
Q9,10 | 2SA1015 | 2 | 相当品可 | 秋月 | |
Q5,6,7,8 | FET | 2SK4017 | 4 | 相当品可 | 秋月 |
PC1,2 | フォトカプラ | PC817 TLP785等 |
2 | 相当品可 | 秋月 秋月 |
LED1,2 | LED | LED(G)3mm | 2 | 秋月 | |
LED3 | LED(R)3mm | 1 | 秋月 | ||
LED4 | LED(Y)3mm | 1 | 秋月 | ||
RY1 | リレー | 12V 2c | 1 | 秋月 | |
SW1 | タクトスイッチ | 白色 | 1 | Reset用 | 秋月 |
SW2 | 緑色 | 1 | Normal用 | 秋月 | |
SW3 | 黄色 | 1 | Reverse用 | 秋月 | |
CN1,JP1,JP2 | ピンヘッダ 2.54mmピッチ | 10ピン分 | 1 | 6,2,2に分割して使用 | 秋月 |
JP1,JP2用 | ジャンパーピン | 2.54mmピッチ | 2 | 秋月 | |
CN2,CN3,CN4 | ターミナルブロック 2ピン | (青)(縦)小 | 3 | 秋月 | |
基板 | 専用基板 | 1 | 頒布 | ||
ケース | AK-P-01 | 1 | |||
基板固定用ネジ | (ケース付属品) | 3x10mm | 4 |
入手先のお店の情報はリンクのページからたどって見てください。
部品の概要
Auto Reverse Controller(ARC) で使用する部品を紹介します。炭素皮膜抵抗器 1/4W
誤差5%の炭素皮膜抵抗器の1/4Wタイプです。
1本5~10円程度なのですが、100本で100~200円で入手できるので、袋でまとめ買いしています。
抵抗値は部品に書いてあるカラーコードで判別できますが、テスターでの確認が失敗しないためにも良いです。
部品の向きは無いのですが、間違った箇所に取り付けしてしまうと外すのが困難なので、気を付けましょう。
炭素被膜抵抗 1W
おなじく、誤差5%の炭素皮膜抵抗器の1Wタイプです。 注意点は1/4W品と同じです。
電解コンデンサ
電解コンデンサは25V耐圧なので、DCCの規格22Vを超えない反映で仕様してください。
電解コンデンサは+-極性があります注意しましょう。
足が長いほうが+(プラス)、短いほうが-(マイナス)です。 半田付けします。
積層セラミックコンデンサ
積層セラミックコンデンサ0.1μFは部品に「104」と表記されています。リード線の加工形状が2.5mmのものが小型製作に向いています。
電解コンデンサと違い部品の向きはありません。
3端子レギュレータ 78L05 / トランジスタ 2SA1015 2SC1815
3種類の部品がすべて同じ形(TO-92パッケージ)なので、刻印をルーペ等で確認して、注意して分別します。
3端子レギュレータ 78L05は安定した5Vを得るために用います。1Aタイプとはピン配置が反対になっているので注意してください。
トランジスタは電流の制御で使用しています。昔は秋葉原で難なく入手できたのですが、東芝製は製造中止で現在では入手できないので、セカンドソース品を使用しています。
部品の向きがあります。注意しましょう。
PICマイコン PIC16F1823 / ICソケット 14ピン
電子ブレーカや、ボタン、LEDを制御するマイコンです。電子工作の分野では有名なPICマイコンを使用しています。
PICに限らずマイコンは購入したままの状態では動作せず、必ずソフトウェアを書き込んで使用する必要があります。
1ピン側に丸印があります。ICソケットも1ピン側に凹みがあります。部品の向きに注意しましょう。
ダイオード: 1N4007
整流用ダイオードの1N4007です。互換性のある相当品も利用できます。(10D1等)
外観と回路図記号の対象は写真のとおりです。部品の向きがあります。注意しましょう。
ダイオード 1N4148
小信号用ダイオード 1N4148です。互換性のある相当品も利用できます。(1S2076A等)
外観と回路図記号の対象は写真のとおりです。部品の向きがあります。注意しましょう。
FET 2SK4017
MOS FETと呼ばれるトランジスタの一種です。線路電源をON/OFFする電子ブレーカで使用しています。
放熱フィン側と基板のシルク印刷を合わせ取り付けします。部品の向きがあります。注意しましょう。
フォトカプラ PC817 、TLP785
赤外LEDとフォトトランジスタを組み合わせた光結合素子です。
PC817、TLP785等の相当品が使用可能です。
1番ピン側に丸印があります。部品の向きがあります。注意しましょう。
LED 3mm
発光ダイオードとも呼ばれ、状態表示に使用しています。3mmタイプを使用しています。
足の長いほうがアノード側です。部品の向きがあります。注意しましょう。
ターミナルブロック 2ピン(青)小
電線の差し込み口を基板の外側に向けて取り付けます。
4個口で使用するものは、必ず、先に横どおしを先に連結させたうえではんだ付けします。
専用プリント基板 (92X87mm)
部品点数も多く、配線も複雑なので、専用のプリント基板を作成しました。この専用プリント基板は、頒布のページで皆さんに頒布しています。
専用ケース (AK-P-01)
専用のケースを中国に発注しています。頒布のページで皆さんに頒布しています。
製作手順
基本的に背の低い部品、熱に強い部品から取りつけます。- プリント基板
- 炭素皮膜抵抗(1/4Wと1W)を取りつけます。
カラーコードに頼らずテスターで確認しながらの組立が結果的に早道です。(慣れている私も何回か付け間違え、修復に大変苦労しています。)
※部品番号と数値をよく確認しながら取り付けします。
- ダイオード類を取りつけます。
ダイオードは部品に向きがあります。シルク印刷と部品のマークを合わせます。
LEDは足が長いほうA側、短いほうをK側(基板の外側)に合わせます。
- フォトカプラとセラミックコンデンサを取りつけます。
フォトカプラは向きがあります。部品の丸印と基板の丸印を合わせます。
セラミックコンデンサには部品の向きはありません。
- 3端子レギュレータ、トランジスタ(2種)、ICソケットを取りつけます。
紛らわしい部品が多いので十分注意します。いずれも部品の向きがあります。
3端子レギュレータは赤色箇所、2SA1015は黄色箇所、2SC1815は水色箇所です。
ICソケットは凹みを左側に取り付けます。ピン数が多いものは一気にハンダ付けせず、1ピン程度で仮付けして様子を見て修正し、その後、全ピンをはんだ付けします。
- FETとスイッチを取り付けます。
FETは足が短く曲げられないのでハンダ付けが難しいので注意します。前項と同じく、。1ピンを仮固定し、修正したうえで、残りのピンをはんだ付けするとうまく行きます。
スイッチは色があるので、写真を参考に取り付けます。
FETもスイッチも部品の向きがあります。注意してください。
- リレー、電解コンデンサを取りつけます。
いづれも部品の向きがあります。注意しましょう。
※レイアウトボードの裏側に設置する等、高さを低く製作したい場合は、電解コンデンサを寝かせて設置します。(逃げのための基板切り込みです。)
- ターミナルブロックを取り付けします。
4個口は必ず事前連結してからハンダ付けします。電線口を外側に向けて取り付けます。
- ピンヘッダを取り付けます。
部品の足が短くハンダ付けしずらいため、PICの書き込みや、3A設定にしない方は取り付けを省略してもOKです。
特にCN1のICSPのピンは動作中に(特に1番ピン)に触れるとマイコンのリセットがかかることがありますので、プログラム改良等で書込みをしない場合は、あえて取り付けなくてもOKです。
- PICマイコンをICソケットに挿入して、基板は完成です。
※PICマイコンの1番ピンとICソケットの1番ピンを合わせます。
- ケースへの収容
ケース収容の場合、なべ小ねじで4か所を止めます。
サンプルソフト
「Auto Reverse Controller」のサンプルソフトです。通常はHEXファイルをPickit等のライターでマイコンに書き込んでください。書込み方法はこちらのページを参考にしてください。
参考までに、ソースファイルも置いておきます。動作方式の解析、改良等に活用ください。
すべてのDCC環境で、動作保証するものではありません。
なお、著作権は主張します。改良版を作成される方は出典を表示のうえ、公開してください。その際、ご連絡をいたければ、リンクを張らせていただきます。
(無断転載は禁止します。また、商業目的の利用も禁止とします。)
尚、ファイルは右クリックし対象を保存を選択して下さい。保存すると拡張子がtxtになる場合がありますので適宜hexに修正してください。
(Ver0.9a) 書込み用 HEXファイルはこちら 2020.05.20
(Ver0.9a) プログラム改良用 C言語ソースはこちら 2020.05.20
トラブル解決(調整方法ほか)
トラブル解決の進め方、掲示板に寄せられるFAQ等をPdfにまとめています。参考にしてください。
WebNucky部品頒布(トラブル解決編)(pdf)はこちら
ユーザーサイト
フジガヤ2 「nuckyさんのAutomatic Reverse Controller その2」なごでんの日記 「nuckyさんのAutomatic Reverse Controllerと設置ボードの組み立て その2」
最後に...
半田不良、部品取付け場所間違え、向きの間違えさえしなければ動作可能なものが出来ますので、時間をかけて丁寧に作りましょう。自分で作ったAuto Reverse Contorollerを活用し、DCCでリバース線運転を楽しみましょう!
良かったら「ポイント用デコーダ」や、車載用「ワンコインデコーダ4」にもチャレンジしてみてください。