EF63運転体験記

 「碓氷峠鉄道文化むら」は旧横川運転区の敷地跡に作られた、子供から鉄道ファンまで楽しめ、峠と鉄道の歴史を見て、触れて、体験できる施設です。

 このページでは、目玉であるロクサン(EF63)の体験運転記を中心にご紹介致します。


鉄道資料館(旧横川運転区)


使用したテキスト類(熱心な勉強でボロボロです)


合格後、運転体験証明書と制帽を頂きました
(軍手と懐中時計は私物を持参です。)
運転講習と試験

 「実物の電気機関車を運転したい」という多くのレールファンの夢を叶えてくれる施設である「碓氷峠鉄道文化むら」に行って参りました。

 運転する機関車はEF63ことロクサンです。ご承知の通りロクサンは信越本線の横川〜軽井沢間の碓氷峠専用機関車です。

丸一日の運転講習の後の試験に合格すれば、念願の電気機関士に(なったつもりに)なれるのです(^^;)

 運転講習は旧横川運転区の建家を利用した鉄道資料館の3Fで行われました。日程の説明の後、碓氷峠の鉄道の歴史を学びました。その後、指導機関士の方からロクサンの概要および走る仕組みを教えていただきました。

 昼食後、ビデオにて保存運転線のロクサンの点検、下り線の運転方法、上り線の運転方法を学習。2回の放映で概ねのイメージを頭に叩き込む。機関車のブレーキは単弁(機関車のみのブレーキ)と自弁(列車全体のブレーキ)があるので、電車と違って複雑だ。この後の実車での講習にて確認することとした。

 保存運転線に移動して、いよいよロクサンの運転台に乗り込む。指導運転士の方の指導のもと各機器の操作方法について学んでいく。なかなか手順が多く難しい。

 さて試験だ。なんとも緊張する。なんだか学生時代に戻った気である。選択問題式ではあるがナメられない。なにしろロクサンの運転がかかっている(^^;)う〜ん悩みながら回答、採点を待つ。「3名とも合格!」とのことで受講者全員無事合格した。

 先ほどのビデオは購入できるようなので、勉強用と記念を兼ねて購入。宿に着いても明日の運転のために、予習・復習を念入りに行う。学校のテストではここまでやらない(笑)これもロクサンを自分の手で動かすためにと思えば苦にならないのであった。



運転するのはロクサンのラストナンバーである25号機


制動試験中のNucky


「前ヨシ!発車!」
ロクサンの汽笛です。(mp3形式121KB)


下り線(登り坂)の運転
走行の様子(動画Mpeg形式900KB)


上り線(下り坂)の運転


単弁を操作し停止位置に合わせる


ご満悦のNucky


ご苦労様でした
運転体験当日

 いよいよロクサンを運転する日がやってきた。
 本日運転するのはロクサンのラストナンバーである25号機である。まずは1エンド側の運転室に乗り込み各種点検を実施することになる。

パンタグラフ上


 まずは運転席後部に
ある「蓄電池NFB」を入りとし蓄電池電圧を確認。マスコンを前進力行位置とし、「ロクサン25号機、パンあげるゾ!」と喚呼しパンタドラムスイッチを「全上」に操作しパンタを上げる。


 正常に上昇しているか、運転席から乗り出して「目」で確認を行う。「パン上げヨシ!」。これは架線を溶断する事故を防止する為と指導機関士の方から話を伺う。このため、必ず目で確認する。


 HB保ちスイッチを操作し、HB(ハイビー:高速度しゃ断器)の動作を確認する。

空ノッチ試験

 スイッチ類の整備を行い、HBが遮断されていること、機関車のブレーキがかかってることを確認し空ノッチ試験を行う。


 前進力行、後進力行、前進発電ブレーキそれぞれの空ノッチ試験を行う。

 機械室から聞こえてくる、「カシャン」という音が心地よい。


 5ノッチから6ノッチに進めたときに、ノッチランプが点灯することを確認。また後進力行、前進発電ブレーキはバーニア制御を入れとして試験するので、ゆっくり進段することを確認する。

通電試験

 続いて通電試験だ。MM、MR各々ブロアを入れて「HB又入」を行い、前進力行1ノッチに投入。電流計100Aを「電流ヨシ!」と確認しノッチオフ。

制動試験

 まず感度試験、自弁で0.4kgの減圧を行い、BC(ブレーキシリンダ)指針が減圧時の2.5倍つまり約1.0Kgを指すことを確認する。

 続いて漏洩試験、自弁で0.6Kgの減圧を行い、BC圧指針1.5Kgが上下しないことを約30秒待って「漏れ無し!」と確認する。続いて自弁を「保ち位置」に移動しブレーキ管圧が5.0kgまで戻ることを確認。機関車のシリンダー圧についても漏れ「漏れ無し!」と確認。「運転位置」で機関車のブレーキも緩むことを確認。

 今度は作用試験。単弁を操作し約0.3kgづつ3回に分けてブレーキをかけ、約1.0Kgかかること、同じくゆるむことを確認。

 続いて圧力試験を行う。単弁を「急ブレーキ位置」にて4.0Kgまでかかることを確認。制動、緩解、戻しバネの作用、ピストン行程を確認する。

 「制動試験、完了!」

下り線(登り坂)の運転

 下り線の運転は2エンド側で行うので、1エンド側のテールライトを点灯させ、ブロアを切り、パンタを下げる。2エンド側運転でブロアを使うため再度投入。

 機械室内の「エンド切替」を2エンド側、「ATS地上子切替」を下りに設定。2エンド運転室に入る。

 いよいよ運転だ。切替コックを操作し再度制動試験、、空ノッチ試験、通電試験を行う。前照灯とつけ、AEN(ATSとEB装置のNFB)、ブロアを入れ、発車の準備を行う。

 自弁を「運転位置」に移動しブレーキをゆるめる。「シュー」という緩解音が心地よい。マスコンを前進力行位置、汽笛を鳴らして、「前ヨシ!発車!」1ノッチ投入。機関車がジワ〜と動き出した。

 ノッチアップは電流計を注視しながら行う。針が下がりだしたら2ノッチ、3ノッチと進段させ加速させる。6ノッチまで投入し「進段ランプ」の点灯を確認し、運転を継続する。最高速度は約15km/hと決して速くはないが、108tもあるロクサンをまさに自分の手で動かしているのだ。

 安全柵で囲われているとはいえ、前方を注視して運転を行う。

 15キロ程度まで上がったスピードが25パーミルの上り勾配で鈍りだす。親子連れやカメラを構えるファンを横目に約300m程走行する。やがて停止地点が見えてきた。ノッチを3ノッチまで順次戻し、自弁にてブレーキをかける。「運転位置」から「常用ブレーキ位置」とし約0.6kgほど減圧する。上り25‰なのですぐに停車する。

 停止後直ちにノッチオフ、単弁で4.0kg、自弁で1.4kgの最大減圧を行う。パンタを下げエンド交換に備える。

上り線(下り坂)の運転

 運転席を1エンドに移動するため、機械室内のATS車上子とエンド切り替えスイッチを操作して下り坂の運転に備える。

 制動試験実施前に、万が一の転動に備えて、発電ブレーキを投入する。HBを又入れしマスコンを前進発電位置に入れ、ハンドル「B9ノッチ」まで進る。

 切替コックを操作し再度制動試験、前照灯等の発車の準備を行う。ただし下り25‰なので制動試験中は完全に緩解させないように留意する。

 単弁が「運転位置」にあることを確認し、自弁で徐々にブレーキを緩解させます。

 下り勾配なので機関車がスーと滑るように動き出します。

 速度が約10km/hほどになると発電ブレーキがかかり始めます。ホットする瞬間です。電流計で発電ブレーキ電流を確認し「B8ノッチ」まで戻し速度を上げます。

 約300m程走行し先ほどの出発地点に戻ってきました。

 途中、単弁を操作し、減速度を背中で感じ、停止目標にて停止できるように調節します。

 少しブレーキ操作が早かったようで、約1m程手前で停止してしまいました。

 ノッチを戻し、前進力行位置として、1ノッチ投入直ちにノッチオフ。単弁操作を行って停止位置を調整します。

 停止後、直ちにHB遮断、単弁、自弁を操作してブレーキをかけます。

 スイッチ類を整備し、パンタを下げ、蓄電池を切り、手ブレーキを緊締し乗務完了です。

 約30分ほどですが、貴重な体験をすることができました。また乗りたいと思っています(^^;; 

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